保育学生が知っておきたい、子どもの気持ちに寄り添う声掛け

不適切保育という言葉を、ニュースなどで耳にする機会が増えています。
保育学生のみなさんも、授業や実習先で話題になることがあるかもしれません。
不適切保育と聞くと、子どもを傷つけるような、明らかに問題のある行為をイメージする人もいるかもしれません。
しかし、子どもの気持ちや人格を尊重するという視点で考えると、日々の何気ない声掛けや関わり方にも、見直したいポイントがあります。
今回は、保育学生が知っておきたい子どもの権利と、子どもの気持ちに寄り添う声掛けについて考えていきます。
まず知っておきたい「子どもの権利」とは?
子どもは、保育を受ける立場であると同時に、一人の人間として尊重される存在です。
すべての子どもには、大切にされ、安心して過ごしながら成長する権利があります。
また、自分の気持ちや意見を伝えることも、大切な権利の一つです。
保育の場では、大人が「こうしたほうがいい」と判断し、子どもの行動を促す場面もあります。
しかし、「子どもだから大人の言う通りにしなければいけない」と考えてしまうと、子どもの思いや意思を見落としてしまうことがあります。
例えば、遊びを終えるときや、片付け、着替え、食事などの場面でも、「今、子どもはどんな気持ちなのかな?」と立ち止まって考えることが大切です。
子どもの気持ちや発達に配慮し、一人ひとりの思いを受け止めながら関わることが、子どもを尊重した保育につながります。
・「子どものため」がいつの間にか大人の都合になっていないか
保育では、集団生活や安全面への配慮から、子どもの希望に応えられない場面もあります。
集団生活を通して、子どもは友達との関わり方や相手の気持ちを知り、自分の思いを伝えたり、互いに折り合いをつけたりすることを少しずつ学んでいきます。
だからこそ、子どもに行動を促すときには、一方的に指示するのではなく、子ども自身が考えたり、周囲の人と関わったりする機会を大切にしながら、伝え方や関わり方を工夫することが重要です。
例えば、片付けの時間になったとき、「早く片付けて!」と一方的に急かしたり、「〇〇ちゃんはできるのに」とほかの子と比べたりする言葉は、子どもの自信を失わせたり、傷つけたりする可能性があります。
そのため、「あと少し遊んだら片付けようね」「どのおもちゃから片付けようか?」「お片付けが終わったら、次は〇〇をしようね」など、子どもが見通しを持って行動できるよう、声かけを工夫することも方法のひとつです。
もちろん、危険がある場合などには、すぐに行動を止める必要があります。
大切なのは、何でも子どもの言う通りにすることではなく、安全やお友達との関わりの中でに必要なことを伝えながら、子どもの気持ちや人格を尊重するという視点です。
保育実習で大切にしたい、子どもへの関わり方
保育学生が特に意識したいことの一つが、子どもへの声掛けです。
実習中は緊張もあり、「ちゃんとしなきゃ」「子どもに言うことを聞いてもらわなきゃ」と思うあまり、つい強い言い方になってしまうこともあるかもしれません。
例えば、次のように伝え方を工夫することができます。
「早くして!」⇒「次は〇〇をするよ。準備できるかな?」
「なんでできないの?」⇒「どこまでできたかな?一緒にやってみよう」
このように、子ども自身を否定するのではなく、子どもの気持ちに寄り添いながら、伝えることが大切です。
実習中は、子どもを思い通りに動かすための言葉になっていないか、1日の振り返りを通して自分の声かけを見直してみましょう。
■「怖がらせて動かす」ことにも注意しよう
子どもに行動してほしいとき、「鬼が来るよ」「先生に怒られるよ」など、怖がらせることで行動を促したくなることもあるかもしれません。
こうした声掛けは、その場では子どもが言うことを聞くかもしれません。
しかし、怖がらせることで行動することが当たり前になると、子どもが自分で考えて行動するのではなく、恐怖心から行動するようになるおそれがあります。
実習中は、保育者が子どもにどのような言葉をかけ、子どもがそれにどう反応しているかを観察してみましょう。
子どもに行動を促す場面でも、保育者は子どもの年齢や気持ち、その場の状況に応じて、さまざまな伝え方を工夫しています。
先生の声かけや関わり方から、子どもを怖がらせることなく、気持ちに寄り添いながら行動を促す方法を学んでいきましょう。
■子どもの「イヤ」にどう向き合う?
子どもが「イヤ!」と言う場面は、保育の中でよくあります。
「イヤ」と言われると、「どうして言うことを聞いてくれないんだろう」と困ってしまうこともありますよね。
でも、「イヤ」という言葉の裏には、さまざまな気持ちが隠れていることがあります。
「まだ遊びたい」「自分でやりたい」「失敗したくない」「今は気分が乗らない」など、その理由は一人ひとり違います。
子どもが「イヤ」と言ったとき、まずは「イヤなんだね」と気持ちを受け止めたうえで、なぜそれをする必要があるのかを、子どもにも伝わるように説明することが大切です。
■子ども同士のトラブルでは「一方的に決めつけない」
友達とのトラブルが起きたときも、一人ひとりの子どもの気持ちや思いを尊重することが大切です。
例えば、「AちゃんがBちゃんのおもちゃを取った」という場面でも、目に見えているのは、出来事の一部分だけかもしれません。
「取ったから悪い子」と決めつけるのではなく、
・トラブルが起きる前に、どのようなやり取りがあったのか
・それぞれの子どもは、どんな気持ちだったのか
・本当は何をしたかったのか
など、それぞれの子どもの話に耳を傾け、気持ちや状況を理解しようとすることが大切です。
必要に応じて保育者が仲立ちすることで、子どもが自分の気持ちを整理したり、相手の思いに気づいたりすることにもつながります。
実習生だからこそ「気づいたこと」を大切に
実習中、「この声掛けでいいのかな?」「子どもが戸惑っているように見えるけれど、どう関わればいいのかな?」と感じる場面があるかもしれません。
そんなとき、実習生が一人で判断したり、対応したりする必要はありません。
気になることがあれば、担当の先生に相談し、一緒に考えてみましょう。
また、実習日誌を書くときも、「先生が○○と言った」という事実だけで終わらせず、「そのとき子どもはどんな表情をしていたか」「その後、子どもにどのような変化があったか」「自分ならどのように関わるか」などを振り返ることで、学びを深めることができます。
実習中に感じた小さな疑問も、子どもへの関わり方を考える大切なきっかけになります。
まとめ
子どもとの関わりで大切なのは、子どもを一人の人として尊重し、その気持ちや意思を大切にすることです。
保育では、安全を守るために子どもの行動を止めたり、生活のルールを伝えたりする場面もあります。
そんなときこそ、「なぜこの言葉をかけるのか」「子どもはどんな気持ちなのか」と考えながら関わることが大切です。
実習中は、子どもの表情や行動をよく観察し、その背景にある気持ちにも目を向けてみましょう。
嫌がったり、怒ったり、泣いたりしているときにも、その子なりの理由や思いがあるかもしれません。
そして、子どもの気持ちを受け止めながら、どのような言葉をかければよいのか、どのような援助が必要なのかを考えてみてください。
実習中の一つひとつの気づきや学びが、子どもを尊重した保育につながっていきます。
子どもの気持ちに寄り添う姿勢を、今のうちから少しずつ身につけていきましょう。



